2017年のFnac小説賞大賞は「バキタ」Bakhita
(写真 : franceinfo 13/09/2017)
2017年のFnac小説賞(Prix du roman Fnac 2017)大賞が発表!
今年の大賞は”バキタ”(Bakhita)というヴェロニク・オルミ(Véronique Olmi)さんの作品です。 彼女はコメディアン、脚本家、でもある小説家。多才な女性なんですね〜。
「バキタ」はどんな本?
「バキタ」は、ジョゼッピーナ・バキタという実在した人物、スーダンの自分の育った村で7歳の時に誘拐されて奴隷となり→使用人→修道女→2000年にヨハネ・パウロ二世により聖人の列にあげられたという女性の生涯を描いた小説。
知らなかったのでウィキペディアを読んでみて驚愕😱。彼女が奴隷の間に受けてきた暴力シーンを抜粋すると:
バキタは奴隷の間、ひどい暴力を受けていた。かつて、彼女の所有者の息子に幾度も殴られる暴行を受け、一ヶ月余り藁のベッドから起きあがることができなかった。のちに彼女は四度目の所有者となるオスマン帝国の軍人に、最もひどい虐待を受けた。当時、自分の所有する奴隷にすることは珍しくもなかったが、彼は自分の所有する奴隷に『彼のものである印』として、刃物で傷を付け入れ墨をしたのである。何年も後にバキタがイタリア語で書いた自伝には、小麦粉の入った皿、塩の皿、刀、それらを女性たちが持ってきて、彼女たちがバキタの肌の上に刃物をつきたてて奴隷を示す模様を刻み、傷口を小麦粉と塩で埋めて傷口が盛り上がるようにしたのだった。バキタの胸元、腹、腕には60種類以上の模様があった。 (Wikipedia : ジュセッピーナ・バキタ)
😱😱😱 うわ、、ザ・虐待・・😭
バキタの自伝、その他本や映画はすでにたくさんありますが、ヴェロニク・オルミの作品はもっと内面的なことを追ったフィクションであることがわかります。
Fnacのインタビュー記事を読むと、ヴェロニク・オルミは、イタリアで出版されたLa Storia meravigliosaというバキタに関する本を読んでバキタを追っていきます。途中では事実の参考資料を作り上げることに集中し、歴史的事実を本全体に浸透させることで、バキアの精神的な内面だけでなく、実際に彼女に降りかかってきた外側となる状況も際立たせたかったとのこと。
“私がやったことは、歴史的な旅ではなく精神的なものを再生しようとする個人的なアプローチです。だから私はキャラクターを考えだし、状況を作り上げたのです。”
アフリカの村々での生活、奴隷制、植民地主義とその商取引、アラブ戦争、20世紀の2つの世界大戦、ファシズムの台頭、など世界の歴史の悲惨な出来事の苦しい部分をバキタは経験し、生き残った女性。史実を元にした小説なのがさらに面白いのでしょうね。作品紹介だけ読んだ時より惹かれます。暴力のシーンとかエグそうだけど・・(←苦手)
ちなみにBabelioという文学評論サイトでは5点満点中4,37を獲得(26人評/2017年9月15日)、他の作品より評価が高いです。しかもフランスで最も権威がある文学賞、と言われるゴンクール賞の2017年のノミネート15作品にも選ばれています。筆力が素晴らしいんだろうな・・と思わずにはいられない。
少し前に”第16回Fnac小説賞(Prix du Roman Fnac)のファイナリスト5人発表 “という記事を書いて大賞予想をしたのですが、私は見事はずれ。昨年の同賞の大賞作品がガエル・ファイユの「小さな国で」というアフリカの内戦から生き延びたミュージシャンの話だったので、今年はアフリカはないかなぁ、、なんて思っていたのですが。。
私の予想は「Ces rêves qu’on piétine」というナチスドイツの宣伝相の妻マクダ・ゲッべルズの話。Babelioでも5点満点中4,17を獲得しているし(29人評)これもバキアに負けず面白そうなのでは、、と思っています。
文学少女だったのはかなり遠い日のこと、最近は文学中年女をやっているわけですが、フランス現代文学、面白い〜。どうやっても読むのが遅いのですが、課題図書としてどちらか一冊読みたいと思います。
有名人の半生記、としては簡単なフランス語で書かれている17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユフスザイさんの「Moi, MALALA」も面白かったです。詳しい感想記事はわたしはマララMoi, MALALAに。