Chanson Douce 2016年 ゴンクール賞受賞小説 

Chanson Douce 2016年 ゴンクール賞受賞小説 

フランス文学賞 ゴンクール賞(Prix Goncourt)

フランスの権威ある文学賞の一つにゴンクール賞という賞があります。権威ある賞!と聞くと高尚なかんじで難しそうですが、最新2016年の受賞作 ”Chanson Douce”(シャンソン・ドゥース ”やさしい歌”)はいくつかの書評サイトをみてみると、文体は易しいとのこと。それなら!と思いたって読んでみました。

 

モロッコ生まれのモロッコー仏人のジャーナリスト・作家のレイラ・スリマニさん(Leïla Slimani)が書いた作品です。130年の歴史があるゴンクール賞の中で、12人目の女性受賞者だそうです。何気にマッチョな賞?女性受賞者少ないですね。全然知らなかったのでどんな人なのかググって見たのですが、笑顔の素敵な美人でした。

 
(Photo : Dailymail の記事より

 

物語書評

物語は、二人の小さな子供がベビーシッターの手によって殺されてしまったところから始まります。まだ赤ちゃんである男の子は即死。少し年上の女の子はもうすぐ息が絶える状態。続く部分はこの最後の悲劇へどうつながっていくのか、が描かれています。

物語の主人公は、小さな子供を二人もつ30代前半くらいの夫婦、ミリアムとポール、そのベビーシッター、ルイーズ。3人の描写がよくできているのですが、ルイーズの感じがなんとも言えません。甘くて優しい性格で、子供の世話の他に食事の支度や家事、パーティーの準備や料理まで率先してやってくれるような完璧なシッター。家庭になくてはならない存在となっていきます。

ルイーズに関係してくる人々の話が本筋の間にはさまれてあるのですが、それは彼女が狂気をもつにいたるまでの心境を際立たせています。パリを舞台にしたフランス現代社会における社会的階層の違いによる偏見が垣間見えてくる作品でした。乳幼児の世話ってものすごく大変なのに、職業としてシッターさんというと、なぜか軽んじてみられるところがあると思うのですが、その状況がよく描かれています。

ちょうどうちの子供たちの年齢とほぼ同じ位の、幼い子供を持つ母親ミリアムが持つ独特の暗い面にも共感しました。弁護士ではなかったけど、小さい子を抱えて会社勤務をしていた時があったので働くママである彼女の心情がよく伝わってきました。

映画化決定!

この作品、映画化が決まっていてマイウェン(Maïwenn)という女優・映画監督・脚本家の女性が監督として指揮をとるそうです。キャスティングなどはまだ未定のようですが、どんな映画になるのかこちらも期待してしまいます。↓が彼女の写真。こちらはミステリアスな感じの美人ですね〜。

 

(写真: LesInrocks.comより)

 

※最終的に女性監督リュシー・ボルルトー (Lucie Borleteau)が作品を手がけることになりました。

【今日の収穫】

権威ある賞をとった文学作品なんて大丈夫かな?と思って読み始めたのですが、現代の話で文章自体も平易なので、辞書を引かないでわからない単語をいくつか飛ばしながらもけっこう読めてしまいます。最後の結末があらかじめわかっているのに、先が気になって読み進めさせられてしまう力強さがあります。最後にルイーズが自分のしたことを思い出すシーンは、リアルな情景が浮かびあがってくるので怖かった😱です。

ゴンクール賞の作品は邦訳されたりされていなかったりしているようですが、これは邦訳される作品なのでは。。と思っています。

【2018年4月追記 】: 邦訳も「ヌヌ 完璧なベビーシッター」2018年3月に発売となっています!

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