フランスの小学1年生、驚く学校システム9つ

フランスの小学1年生、驚く学校システム9つ

長男が9月から公立の小学校に通う1年生となりました。フランスの初等教育は5年。1年目をCP(Cours Preparatoire)といい、初等教育を受けるための準備コースと位置付けされています。目新しい文房具、新しいボキャブラリー、知らないこと、違うことに驚きながら新鮮な刺激を受けています。

出産がスペインだったのですが、出産準備していた時のことを思い出しますね・・。初めての出産。自分のお腹の中に人間ができ、育った人がお腹から出てくるという人生の大行事を外国ですることで、語学学校や大学院での勉強、仕事には出てこなかった語彙を学びました。今回もそんな感じです。

学校が始まって3週間ほど経ち、これがフランスの小学校!と衝撃を受けたことをご紹介します。

1. 入学式はなし

いつも通り子供を門のところまで送り届けて終了の夏休み明け初日。それでも両親そろって来れる家はほとんど一緒に来ていて、門を通って校舎に消えていく子供の姿を撮影する人で大にぎわいでした。ドキドキの小学校入学1日目なのに、呆気なく終わってしまってやや物足りなかったです。

うちの夫はドイツ教育を受けてきた人なのですが、ドイツにも親参加で入学式があり、1年生になる子供はプレゼントをもらうとのこと。何もないのか〜、とホッとしてでも少し物足りない・・という感じでした。

2. 同じ学齢の子だけが集まるクラスと、他学年と合同のクラスがある

今年度から学齢1年生だけのクラスと1年生と2年生が合同のクラスの2クラス制となっています。長男が幼稚園年長の時に園長と面談をしたのですが、その時にどちらに入れたいか希望はありますか?という質問を受けました。その子供の性格や質問がどんどん上がってくるタイプの子を2年生と合同クラスに行くよう手配するつもりだが、希望があれば合同クラスに入れてもいい、という話でした。うちは性格的に同じ学年の子たちとのんびりやって行くのがいいような気がしてそちらで、という話をして、その通りになっています。合同クラスはどうやって授業を進めるのか、気になるところです。

ちなみに、小学校の横にある次男が通う公立幼稚園も上記に従い、今年度は全5クラス制で、年少のみ、年少・年中クラス、年中のみ、年中・年長クラス、年長のみ、という設定。教員と補助の数が大幅に増え、1クラス辺りの生徒数が約30人だったのが25人となっています。

幼稚園の学齢は生まれ月によって差が大きいので2学年合同でいいと思うのですが、義務教育も多学年と最初から一緒にしてしまうのが目新しく、なかった発想です。今よりさらに飛び級しやすくするためなのかな?学校の規模や場所、自治体の方針によって合同クラスあり、なしの状況変わるかもしれません。

3. 親には「学校におけるライシテチャート」配布

入学初日に配られた「学校におけるライシテチャート」で共和国教育のベースをしっかりと復習させられました。「共和国は宗教から独立」というフランスに移民する人が最初に叩き込まれる価値観は、義務教育初年度から徹底して教えられていることがわかります。

La Nation confie á l’École la mission de faire partager aux élèves les valeurs de la République.

国民は、共和国の価値を生徒と分かち合うという使命を学校に委ねる。

「学校は宗教から独立」という項目にはこう書かれています :

  • Les enseignements sont laïques. Afin de garantir aux élèves l’ouverture la plus objective possible à la diversité des visions du monde ainsi qu’à l’étendue et à la précision des savoirs, aucun sujet n’est a priori exclu du questionnement scientifique et pédagogique.

学校の教えは宗教から独立している。世界観の多様性と知識の広さと正確さに対して可能な限り最も客観的な公然性を学生に保証するために、いかなるテーマも科学的および教育的論点から理屈抜きに除外されることはない。

  • Nul ne peut se prévaloir de son appartenance religieuse pour refuser de se conformer aux règles applicables dans l’Ecole de la République.

個人の宗教的所属のため、という理由で共和国の学校に適用される規則の遵守を拒否することはできない。

  • Le port de signes ou tenues par lesquels les élèves manifestent ostensiblement une appartenance religieuse est interdit.

生徒が象徴的に宗教上の所属を示す印となるものや服を身につけることは禁止されている。

  • Par leurs réflexions et leurs activités, les élèves contribuent à faire vivre la laïcité au sein de leur établissement.

思索と活動を通して、生徒は学校の中で世俗主義の生活を送ることに貢献する。

「科学と教育にまつわる質問を除き」と題目までしっかり書いてあるので、「共和国」という思想が討論を重ねて時間をかけて作り上げられてきたシステムなんだな、と感じられます。

詳しく知りたい方はこちら Livret Laïcité をどうぞ。

 

4. 教科書は貸しだされるもの

日本のランドセル的カバンで、リュックサックよりがっちりした背負えるかばん(Cartable)から、くたびれた教科書が出てきました。何これ?と長男に聞くと、先生がくれた、とのこと。といっても貸与なので、また返さなければいけません。書き込み禁止、丁寧に使わないと怒られます。昨年と同じ教科書を使ったカリキュラムだったら使い回した方がエコですよね。

 

5. 本人のものとして使うドリルにはプラスチック透明の製本カバーをかける

キッチリ製本カバーをかけないとヨレて使いずらくなるとのことで、ピッチリやらないといけません。すでに製本カバー自体、すぐに貼り付けられるようベタベタしていたりするのですが、これが結構難しい。折り紙が好きでこの手の作業は割と得意とするところなのですが、綺麗に仕上げないといけないので何気に神経使って時間をとる作業でした。

 

6. ノートは無償でもらえる

連絡帳や授業に使うノートは、学校から無料で支給です。買わないのが不思議な気分。教育に税金が回っているのが実感できていいですね。

7. 教科の基本は国語と算数

国語と算数が中心科目で、他には週2回運動、週1回コンピューターの授業と図書館の時間があります。運動の日はスポーツしやすい恰好で来る、というだけで、体操着をわざわざ準備するような必要はありません。理科、社会、音楽、図工、道徳はなし。

8. 最初は音読、詩の暗記が宿題のメイン

綴りどうりに発音しないフランス語。どうやってルールを知らない子供に音読させるのだろう、と思っていましたが、まずは音を覚え、そのあとに単語をビジュアル的に覚えるんですね。

 

 

大人が最初に単語に指をさしながら音読をし、次に大人が字を指さしして子供に読ませる、という方法で宿題をしています。こうやって子供は詩の暗記をしていくのですが、自分に続く子供の発音が良すぎて、すでに恥ずかしいかぎりです。

フランスに引っ越してきてあと数ヶ月で丸4年、来たばかりの時は長男も私もフランス語ゼロだったのに、かたやすでにネイティブ、自分は外国人のまま・・・。子供のスポンジのような脳、という比喩は本当です。

算数の宿題は、数字を書き順通りにかく練習をする宿題がたまに出ますが、国語に比べたら比率は少ないです。

 

9. 水曜日は学校なし

幼稚園も水曜休みスケジュールなのであまり目新しいことでもないのですが、水曜日は学校がないので習い事をさせるうちが多いです。音楽と図工が授業にないので、この辺を補うことができるといいよな・・と思いつつ、我が家の今年の習い事は、長男も次男もテニスと補習校、さらに長男はチェス、次男は音楽導入クラスです。補習校を除き、親がその習い事に同席したり別の場所で待機する必要はないのですが、送迎係として一日忙しい日。

 

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【今日の収穫】

共和制の原則を親は読まされ、「フランス人はこうやって出来上がる」を1から側で見ていくことになるのでこれからが興味深いですね。

子供がどうやってフランス語を覚えていくのか、丁寧な言葉遣いにあたるvousはいつから使うのか、動詞の活用はいつから覚えるのか、綴りと発音はいつ一致を学ぶのか、などなど気になるポイントが沢山あります。そして、宿題はいつまで手伝いできるんだろう?と私個人はどこまでついていけるんだろう・・?、気がかりなところです。

 

フランスに住む子供たちはどんな学校生活をしているのか、日本との違いを書いた記事はこちらです。

フランスの小学校2年生、面白いシステムと思ったこと7つ

 

外国人の私がネイティブの子供の宿題を見るときに苦痛なのが発音関係。それでも自信を持ってやれることのアイディアをまとめました。

フランス小学1年生の音読の宿題。発音の下手な親でも手伝えること4つ

 

フランスの小学生が初めて使う辞書として有名なものの一つ、Larousse juniorを大人の学習者が使ってみた感想です。

フランス語 学習用初めての仏仏辞典 LAROUSSE JUNIOR POCHE

 

フランスに住む子供が実際に使っている学習教材は、大人のフランス語学習者の勉強にも使えます。使えるサイトや教材をまとめました。

子供用フランス語教材で学ぶフランス語

 



2 thoughts on “フランスの小学1年生、驚く学校システム9つ”

  • はじめまして。
    我が家にもこの9月CPになった6才の娘とPSに入った3才の息子がいます。
    住んでいるのも地中海沿いです。

    まさに同じような子育てフェーズで、たくさん共感しながら読ませていただきました。
    MONAの教科書も全く同じです。特に希望しなかったのですが、娘はCP-CE1クラスに入りました。
    私が新学期一番驚いたのが、時間割が配布されることなく、
    しかも「体育」の時間が全く割り当てられていない、ということです、、、
    (同じ学校の校長担任のCM2クラスは週2回割り当てられているので、学校事情でもないような)

    一応、外のプールに12月から3月通うとか(また寒い時期に、、)、
    外部から目の不自由な(!)講師がきてホッケー(!!)を教えてくれると個人面談で伺ったのですが
    色々ナゾ過ぎてある意味今後が楽しみです。

    またお邪魔しますね。

    • akikoさん、

      初めまして。コメントどうもありがとうございました。同じくらいの年頃のお子さんがいらっしゃる方からコメントいただけて嬉しいです。
      我が家にはCPになった6歳と、MSになったもう少しで4歳になる男子2名がいます。トゥーロンとマルセイユの間くらいにある村に在住です。

      同じ南仏在住、同い歳くらいのお子さんがいらっしゃる、ということでakikoさんのブログを興味深く読ませていただきました。
      言われて気づきましたが、時間割の配布もなかったですね・・。夏休み前の説明会で口頭で言っていましたが、うちの子供が通う学校CPではプールの授業がないそうです。
      CE1から始まるということでしたが、半分くらい信じておくことにしています。笑
      娘さんはCP-CE1の合同クラスなんですね、どんな雰囲気なんでしょう。ぜひブログに続きの話をよろしくお願いします。

      またブログにお邪魔させていただきますね。

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