フランス中学1年目。6èmeではどんなフランス語を読んでるの?

フランス中学1年目。6èmeではどんなフランス語を読んでるの?

上の子がフランスの中学に入学、中1にあたる6ème(6年生)になりました。

(フランスの小学校は5年制、義務教育6年目が中学1年生。ちょうど10〜11歳、日本の小学5〜6年生くらいです)

教科書やプリントを見ていますが、どの科目も興味深いのですが(国が違うと習うことの視点が変わる!)、普通にフランス語がグググッと難しくなります。今回の記事では、フランス6年生のフランス語の授業でどんな読本を読んでいるのか、学校から指定された中学生用の読本6冊ご紹介します。

以前、パソコンスキルなどの講座を学べるような学校で開催されていた外国人用フランス語講座に通ったことがあるのですが、そこでは中学初年度6年生で使っている教科書や問題が教材として使われていました。レベル分けはなく、初級者から上級者までみんな一緒のクラスだったのですが、使っていた本(のコピー)やプリントなどは全員一緒という強引さでしたが・・。数年後に改めて子供の使っている6年生の教材を見て、その時の先生が、

「フランス人が学ぶフランス語の教材を使って外国人がフランス語を学ぶときには、6年生の教材が大人の最低限の知識が学べ、内容としても難しさとしても一番ちょうどいい、それ以上だと難しすぎるし、それ以下だと簡単すぎる。」

と言っていたことを思い出しました。

一般常識の基礎を勉強できる、でも大人の本ほど難しくない説明なので、フランス語学習者には一般常識に必要な語彙を勉強するのにうってつけなのでしょう。今更ながら鋭い先生だった!私の勉強に超なってますよ・・。

どの指定読本も約100ページ程度、◯社の本」と指定があり(出版社が違うとダメ、「中学生向け」と書かれてあること)、読む期限が設定されています。例えば「◯◯を秋休み前までに読むこと」と指示され、その休みに入る前に指定された本についての読解確認テストを行うようなサイクルで年間6冊です。フランスの中学校の休みは、ザクっと6週間に1回、2週間の休みとなるので、1冊を5週間で読むペースです。内容のゴツい1冊は、1年をかけて読み進めます。

フランスの6年生はどんな本を読んでいるのでしょう。

 

La maison qui s'envole - Claude Roy

最初に読むことを指定されたのが「La maison qui s’envole」。直訳するなら「飛びさる家」、クロード・ロイ著。フランス語の本には裏表紙 (quatrième de couverture)にその話のあらすじ的なキャッチの文章があるのですが、そこには・・・

プチ・ミネ夫妻は夏休みの1週間、子供たちをナニーとおじいちゃんに預けて家を留守にする。しかしその間、彼らの頭の中に狂気の風が吹き始める。エルミーヌ、ジュール、エリック、ジャックは家を全て解体してしまうのか?戦場と化した時、家のモノたちが反乱を決意する。

とあります。9歳以上から、教育省推薦、とあり、10〜11歳くらいの子供たちの指定読本になることが多いようです、アマゾンのコメントを見たら「学校から指定された本」という人をチラチラ見ました。

 

この本は85ページなので比較的短め。読んでみたのですが、4人兄弟の子供たちのファンタジーで、好きな子は面白く読めると思います。知らない言葉が出てきても読み進め、内容理解できると思いますが、調べて覚えた方が自分の表現が豊かになっていいですよね。

特に付属で読解確認問題はついていませんが、「Questionnaire +作品タイトル」でググると読解問題が出てきますので、自主的に読解問題に取り組めます。

 

l'odyssée - Homère

1年をかけて読む、と指定された本は「L’Odyssée」。ホメロス著の「オデュッセイア」です。えー、😱そんな古典、私も日本語でさえ読んだこともない、こんなの6年生にはかなり辛いのでは?!とびっくりしました。うちの子供が読めるのか・・汗 岩波文庫の紹介文を見たら、

トロイア戦争が終結。英雄オデュッセウスは故国イタケへの帰途、嵐に襲われて漂流、さらに10年にわたる冒険が始まる。『イリアス』とともにヨーロッパ文学の源泉と仰がれる、ギリシア最古の大英雄叙事詩。

って書いてありました。めっちゃ敷居が高いっ(@_@) 子供が学校から指定される本、母さんもこっそり全部読んでみようと思っていたのですが、もう挫折が見えている・・!ちなみに裏表紙の紹介はこんな感じです↓

トロイア戦争は10年前に終結したが、ユリシーズオデュッセイアの英語化名。フランス語もこれに近くて Ulysse )王は故郷のイタケを遠く離れ、いまだ海をさまよっている。妻ペネロペと息子テレマコスを探すため、主人公は恐ろしい怪物に立ち向かわなければならない:そこにはキュプロクス、人魚、そして魔女キルケの姿も…。

ユリシーズはこれらの試練から無傷で生還できるだろうか?それとも、これらの残酷な者たちと接触したとき、彼は人間性の一部を失ってしまうのだろうか?

 

 

 

読解を深めるための説明も充実しています。最初に作品紹介として「オデュッセイア」の構成や分析、その時代背景、歴史年表的に時間と出来事の説明などを読んで、本文に入る構成です。中身はこんな感じ

 

漫画っぽい軽いタッチの絵が表紙だけど、長いし内容ちょっと複雑ですよね・・。フランス語でも「漫画で読破」みたいなシリーズがあったらいいのにね。テスト頑張ってくれやな、子供。

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La belle et la bête et autres contes

「La Belle et la Bête et autres contes」(美女と野獣 (ルプランス・ド・ボーモン夫人著)、他の物語)。他の収録物語には、Riquet à la houppe(とさか頭のリケ / シャルル・ペロー)とLe vilain petit canard(みにくいあひるの子 /ハンス・クリスチャン・アンデルセン)があります。

ヨーロッパの代表的物語作家の作品が3作品入っている本です。各作家の紹介や短い伝記、時代背景説明、読解確認問題もあります。表紙はアニメチックですが、挿絵で入っている絵が昔に描かれた美術作品になりそうな絵ばかりでこちらも見とれます。

裏表紙の紹介文

昔々、魔法で野獣に変えられてしまった王子と、とても美しくて善良な少女がいた..昔々、とても醜いけれど機知に富んだ王子と、とても美しいけれど知性に欠ける少女がいた..あるいは、本当は白鳥だったいたずらなアヒルの子がいた..。
他人の視線に依存する登場人物たちの運命が明らかにされ、欺瞞にみちた外見の蜃気楼が最後に払拭される。

外見だけに惑わされるなよ・・という良い教訓の本ばかり。ストーリーも知ってるし、読んでみてもいいな、と思わせられる本でした。

 

 

シャルル・ペローの「赤ずきんちゃん」「眠れる森の美女」などに比べると、「とさか頭のリケ」は知名度が日本では低いかもしれませんが、他の2作品に通ずるオチの作品です。↓の童話集に「とさか頭のリケ」が入っています。

 

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le livre de la jungle

「Le Livre de la jungle – Trois aventures de Mougli」(ジャングルブックーモウグリの3つの冒険 / キップリング著)。ディズニーでアニメ版でも実写版でも映画化もされている「ジャングルブック」。 元々7つの短編からなる作品ですが、そのうちの3つの短編が収められています。挿絵が全くない本なのですが、会話文が多いのでまだ読みやすいかも。巻末に読解問題と語彙の説明があります。

 

裏表紙の紹介文 :

生後数ヶ月でオオカミに保護されたモウグリはジャングルで熊のバルーと黒豹のバギーラの慈愛に満ちた中で成長する。しかし、悪名高い虎のシア・カーンがモウグリを手に入れようと、あらゆる手を尽くして探し回っていた…。

次から次へと繰り広げられる冒険の中で、モウグリは敵の仕掛けた罠に立ち向かわなければならない。小さな男の子の居場所となるのは?

世界的な成功を収めた学習物語『ジャングル・ブック』は、危険と勇気と友情が支配する素晴らしい世界の中心へと私たちを誘う

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deux ans de vacances

「 Deux ans de vacances 」 (十五少年漂流記、ジュール・ヴェルヌ著)。1800年代に書かれた本です。邦訳はフランス語のタイトルからの直訳ではないのですね、「十五少年漂流記」にした邦訳センスが素晴らしい。

 

 

物語全てではなく、重要な場面が20場面ほど抽出され、物語を読めるようになっています。各場面の後に背景や背景に関連することの説明があり、文章読解、語彙などの質問もあります。

古い表現をそのまま使っている部分もそれなりにあり、全体的に格調高めな文章に感じます。文章中にも背景とそれに関するが細かく載っています。

例えば、「港の北側の海岸」という表現に、「shore sur la côte septentrionale」とあり、septentrional は「北の」という形容詞だそうです。普通に「du nord」とは言わないんですね。名詞のSeptentrion には「大熊座」の意味もあるそうで、大熊座の7つの星からなっているから、北に見えるから、という意味合いから「北の」としても古くは使われていたそうです。何かこう一気に格上げ✨、洗練されたかんじ・・さすが巨匠ヴェルヌ。日本でも小5・小6で「竹取り物語」「柿山伏」など、古典文学の勉強をしますもんね、同じような勉強なのかも。

↓は目次、物語サンプル、質問サンプルの写真です。

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le roman de renart

「Le Roman de renart」(狐物語)は「十五少年漂流記」よりもさらに古く、中世、封建社会の時代に創作されたいくつかの物語で構成されています。これらの物語は、町から町へ、ブルジョワや農民の聴衆に口承で語られて有名になり、1200年頃には羊皮紙に書き写されていたそうです。

この本に収められているのは、新たな翻案で書かれた15の狐の冒険物語。3〜5ページくらいの物語があり、その後に読解質問やその当時の背景小話などがあります。例えば中世における狐はどのような存在だったか、狼は?それはどうしてか、とか、商人や農民たちの暮らしなど、中世の社会の様子も勉強できます。

Wikipediaの「狐物語」に、

この物語が流布した結果、フランスではそれまで「狐」を意味していたラテン語由来のフランス語グピ(goupil)にかわり、この物語の主人公の名前にすぎなかったルナール(Renart、現代フランス語ではRenard)が「狐」を意味する一般名詞として使われるようになった。

とあり、驚きました。こんな時代に、狐なんて一般名詞が取って代わられるくらいの大ヒット作品だったんですね。

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le médecin malgré lui

「Le médecin malgré lui」(邦題「いやいやながら医者にされ」、モリエール著)、17世紀のフランス超有名劇作家、モリエールの喜劇です。仏語の題名もですが、邦題もイイかんじですね 笑!

演劇台本のように会話だけで話が進みます。木こりが医者になって適当なことを言い、それを信じる人たちもいる・・という、どの時代にもあるあるの社会の縮図、と名高い作品なのだそうです。21世紀に入っても笑えるのは、時代を超えられるだけの普遍的な笑いのツボがあるからなのでしょうね。

モリエールの紹介、時代背景の説明、読解確認の質問、この作品が生まれた背景、17世紀の有名な演劇作品の紹介もあります。また、2000年以降に演劇で発表された作品についても解説があります。

裏表紙 : 

マルティーヌは、悪党の夫スガナレルに復讐することを決意した。夫を無理やり医者にし、医者であるかのように振る舞う羽目になる。果たしてマルティーヌの復讐は成就するのか?スガナレルはどうやってこの状況を切り抜けるのか? 

 

大人向けで少々違うところもあるかもしれませんが、岩波文庫から邦訳が出ています。

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この本を探していたら、Hachette 社の「やさしいフランス語で読むリーダーシリーズ」にも「Le médecin malgré lui」があることを発見。中学生用に書かれた本とB1に書かれた本、どんな違いがあるんでしょう、ちょっと気になります。↓

 

 

今日の収穫

「中学生向け」と書かれている本を子供の入学とともに買ったわけですが、どれもお値段良心的なことを知りました。普通の新書サイズの Livre de poche と呼ばれる本よりずっと安いです。作品の脇を固めるような知識や背景の説明もあるし、古典など有名作品に興味があるけど難しそう・・、と思う人には、「中学生向け」とある本でも十分学べると思いました。

いくつかのフランス有名編集社が「中学生向け」文学本を出していますが、個人的には Hachette 社の Biblio Collège シリーズが読みやすそうな印象です。

全部の指定読本を数ページは目を通してみたのですが、何冊かは通しで読んでみたいです。今後、自分のためにわざわざ買って読もうなんて思わない本もあるし。でも何冊読めるのか・・😅。子供にフランス語の発音を直してもらう立場になって数年経ちますが、読む方でも、すっかり抜かれてることに改めて気付かされます。

長男だけでなく、まだ小学生の次男もですが、改めて子供の吸収力に驚かされることが多くなりました。さすがゴールデンエイジだ!と思う日々です。

 

フランス語で読書に興味がある方、こちらの記事もあわせてどうぞ。

 

ある語学学校のA1からB1レベルのクラスで使われている作品の紹介はこちらです。↓ 

フランス語の多読に。レベル別読み物初級〜中級者向け(A1-B1レベル) 15作品

 

 

同じくある語学学校のB1アッパーレベル からC1クラスの読み物リスト。こちらにも面白い文学作品がたくさん出ています。↓

フランス語の多読に。レベル別読み物中級〜上級向け (B1-C1)20作品

 

なかなか読む時間が取れない方にオススメなのが聴く読書。オーディブルが使いやすく続けやすいです。↓

Audibleをフランス語の勉強に使うには?挫折しないコツ7つ。

 



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