フランス発、日本を描く漫画 ONIBI  鬼火フランス人二人組の日本妖怪紀行 

フランス発、日本を描く漫画 ONIBI  鬼火フランス人二人組の日本妖怪紀行 

フランス発 日本を描いた漫画 ONIBI

日本のことが描いてある漫画を見つけたので、おばけ好きな子供達に日本語に訳して読んであげたらどう?と義母にONIBIという漫画をもらいました。水木しげると宮崎駿の作品から影響を受けていそうな昭和の日本を思い起こさせる、雰囲気のある絵です。

フランス人漫画家が描く日本のおばけ話?一目で、日本でもウケそう!と思って調べてみたら、日本語も「鬼火 フランス人二人組の日本妖怪紀行」という題名ですでに発売されていました。こちらもおいおい読んでみたいですが、今日は本の紹介と子供に読むためにフランス語で読んでみた感想です。

フランス人漫画家ユニット「アトリエ・セントー」

アトリエ・セントーというセシル・ブラン(Cécile Brun)さんとオリヴィエ・ピシャール(Olivier Pichard)さん、フランス人二人ユニットの漫画家が描いた作品です。ユニット名の「セントー」はお二人が大好きな「銭湯」からきているそうです。いいネーミング👍

(写真: Éditions Issekinicho – Atelier Sentoより)

ONIBIができるまでのストーリー

インタビュー記事を読むと、飾り気のない普通の日本が好きで、よく観察、研究されていることが伝わってきます。他の日本好きな人たちと同じように、映画、音楽、漫画、版画などから日本文化に興味を持つようになり、京都や東京のような有名な観光地を短期で訪れていたそうです。大学で日本語を専攻していたがセシルさんが日本の大学へ交換留学へ行く機会を得たのですが、その行き先に選んだのが新潟(もちろんオリヴィエさんも一緒!)。観光地としてはマイナーですが、二人で1年ほど暮らす間に絵葉書になりそうな日本ではなく、普通の日本を知るようになりました。

新潟で出会った人たちと深めた交流をいかし、その後も新潟をベースに定期的に戻っては日本探索をしているそうです。彼らは日本に行くたびに、たくさんのスケッチを描き、写真やビデオを撮り、日常風景について記録を収め、これらの資料が現実とONIBIの物語をつなぐ非常に貴重なデータになることを語っています。

二人はONIBIの主人公として登場しており、作品を構成する話は彼らが個人的に経験した状況からヒントを得ているそうです。彼らは外国人の視点で日本を見ていることをよくわかっていて、人々や日常生活の場所が幽霊や妖怪よりも不思議なものに見えることもあるので、そこに笑いやユーモアを感じるとのこと。

妖怪やおばけの民話に対しての考察も鋭く、ゲゲゲの鬼太郎や隣のトトロのおかげで、日本では目に見えないスピリチュアルなモノの話が現代の生活に沿って生きている、と述べています。反面、妖怪やおばけの持つ暗い部分が影をひそめて伝わらなくなっており、年をとった人たちほどそれを残念に思っていることがわかる、ということも言っているので、日本人として内側からは気づけない視点と考え方!、ととても感心してしまいました。

 

物語書評

おばけ好きなフランス人の著者二人が、目に見えない妖怪を写真に撮れるというカメラを購入。新潟県を舞台のメインに撮影を試みていく話。青森の恐山へも行く話もあります。

いくつかの短編があり、読みながらハラハラ、ドキドキ、というよりは、最後のオチを楽める作品だと思いました。お稲荷さんのお話があるのですが、日本の星新一、フランスのギィ・ド・モーパッサン(Guy de Maupassant)の話を思い出すようななんとも言えない終わり方です。

自分たちが外国人であることをよくわかっていて、そこを笑いにしているのも面白いです。例えばうどん屋さんに行った二人はうどんの汁を全部飲みきってしまって、そのお店に彼らを連れて行った男性とお店の人が全部汁を飲んでいることに驚かれるのですが、美味しいから全部飲んだのに何が悪いのかよくわからない、という反応が何気ないところに描かれています。これ、外国人あるある!なので、クスっと笑ってしまいます。

日本の昔話に出てくるような神社や自然の風景が、綺麗に描かれています。外国人が描いた風景や、造った建物やお店などが、その国の本来の伝統を新鮮に美しく伝える、ということはよくあると思うのですが、この作品もそのいい例だと思いました。絵も話も日本の日常的な美しさがあって、二人の優しさが伝わってきました。

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【今日の収穫】

フランス人の漫画家さんの作品を初めて読んだのですが、思ったよりずっと楽しめたのが発見でした。

作品が日本を題材にしていることで感覚がよく伝わってくることもありますが、漫画もフランス語の勉強になりますね。日常の何気ない言い回しをイラストを見ながら知ることができるので、フレーズがイメージと一緒に頭に残りやすくていいな、と思いました。例えば、私はこんなフレーズをメモしてしまいました。

  • C’est prudent de conduire pendant un typhon? 

  (台風の中、運転するのは賢明なのでしょうか?)

  • Mais oui! J’ai h’habitude!

  (ああ、でも慣れてるからね!)

「危ないですよ」とダイレクトに言うより、「賢明なことでしょうか?」と尋ねる方が、相手を敬う感じしますよね。状況や立場を踏まえた言い方の勉強になりました。

うちの5歳と3歳の息子たちは鬼太郎もトトロも大好きなので、絵の雰囲気に興味あるようで少し読んでみたのですが、神社やお稲荷さんなど、どうも想像しにくいようです。海外に育つ子供だと、小学3年生くらいから楽しめそうな感じかな?と思いました。大人の私は作品を楽しみながら表現を勉強できました。

フランス語を学習しながら楽しんで読める本だと思います。

 

 

 

 

 

 



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